―2025年7月14日 10:20―
―大西洋 海上―
夏。それは一年の内で、もっとも暑い季節。
子供たちの喜ぶ長期休みのある季節。そして、暑いの駄目なえむがもっとも苦手とする季節。
夏と言えば、海である。
一面に広がる青い海。白い雲。まぶしい太陽!!そして、空を埋め尽くす無数のUFOファイター!!
「何でこんな時に襲って来るんだインベーダーの野郎ッ!!(怒)」
「いや、グレイ…。頼むから少し落ち着け(汗)」
当然ながら、今・・・イヅキ小隊は、その対応へと終われていた。
ちなみに、今回はビルもないため、エリス隊員はビル戦法が使えず、船の中で待機状態。ハルナ隊員は空を飛びまわりつつイズナーDカスタムと、サンダーボウ15で応戦中。
そしてイヅキ隊員とグレイ隊員は、AS-20で応戦中である。ちなみに、この輸送船に乗っている戦力はイヅキ小隊のみ。あとは非戦闘員である。
情勢から言えば、こちらが優勢だった。やはり対空戦闘でペイルウイングの存在は大きい。
しかし、優勢ではあるが不利でもあった。と言うのも、1kmほど向こうにUFOキャリアーがいて、そこからエンドレスにUFOファイターが出てくるのである。
何でこんな事になったのか。と言われたら、襲われたからなのだが、そもそもなんで船の上にいるのか。と言う事については説明しなければならない。と言う訳で、話は2日前に逆上る。
―2025年7月11日 13:45―
―ニューヨーク郊外 EDFアメリカ支部ニューヨーク方面基地―
「アマゾン奥地に巨大生物?」
その日、ニューヨーク方面基地の司令官室に呼び出されたイヅキ隊員は、司令官から告げられた一言に目を丸くした。
「そのとおり。だが、あんな何もない(?)場所で巨大生物が発見されたと言うのも奇妙な話だ。そこで、君達イヅキ小隊に調査に向かってもらいたい」
「……調査ですか」
特別部隊という位置付け上、行けと言われれば行くのは構わない。だが、調査程度に現地に向かう必要があるのだろうか?とも思う。
「南アメリカにも部隊がいるのでは?」
「うむ。だが、あちらは現在、都市の防衛に戦力を割かれており、人員を調査に裂く余裕がないらしい」
「……なるほど」
なんでも、インセクトヒルが一度に四つも出てきたため、それの対応に追われているらしい。確かにそれなら、余裕がないと言うのもわかる気がする。
「わかりました。すぐに調査に向かいます」
―2025年7月14日 10:30―
―大西洋 海上―
そして物語は現在に移る。輸送船のデッキにビーチパラソル、ビーチチェアと小さいテーブルを用意。その後カクテル片手に、優雅な一時でも――――と思った矢先に、襲撃を受けたのである。
もちろん、服装もそれに相応しき姿での予定だった。つまりなんと言うか水着+αで…との事だったのだ。ちなみに発案者はグレイ隊員である。
が、いざ着替え終わって残り二人を待っていた時の事。突然、UFOキャリアーが接近。戦闘へと突入したのである。日頃の訓練により、わずか30秒でアーマースーツを着用。すぐに迎撃を開始したのだが・・・。
「俺のささやかな楽しみを奪いやがってェェェェェェ!!!!」
「グレイ、一人称変わってるぞ?(汗)」
グレイ隊員がなぜかぶち切れていて、今に至ると言う訳だ。なぜ、ぶち切れているのか。イヅキ隊員はさっぱりわからない。…勘のいい読者なら、たぶん想像は付くだろう。
とりあえず迎撃は出来ている。しかし、大元を潰さない限り、この戦闘が終わらないのも確かだった。
なぜなら、あのUFOキャリアーと言う物。例え、3時間だろうと5時間だろうと、落とさない限りエンドレスで黒蟻やらUFOやら出してくるのである。
だが、しかし距離が遠いため、こちらの装備では届かない。さらに、ペイルウイングの飛行可能時間ではたどり着けないのも実状。
泳いでいく事はできるが、攻撃もできない。
「このままじゃ、消耗戦だな…」
こちらは一応人間である。いずれは疲れというものが出てくる。
「せめて、あのUFOキャリアーを落とせれば…」
応戦しつつ、遠くにいるUFOキャリアーを睨む。あれさえ落とせれば、どうにかなるのだが……。
「…確かに一理ある。ならば、これを使うといい」
「へ?」
不意に、すぐ側から男の声がした。振り向けばアーマースーツの上から白衣。しかもヘルメットの代わりに眼鏡をつけた男がそこに立っていた。…ついでに、どっかで見た記憶がある。
首を傾げる事、約10秒。すぐに誰なのか思い出した。
「……き…君は!?」
「ふむ? 誰かと思えば、以前輸送機でお世話になった君か。久しぶりだな」
イギリス方面第7陸戦部隊所属。元開発部のアレック・イーグリット。そして、輸送機の上で戦闘をすることになったきっかけとなった人物である。詳しくは作戦No.002を参照。
「こんな所で何を?」
「実は、また開発部に戻る事になってね。それで、強化型バゼラートの試作機の調整等を兼ねて同乗していたのだよ」
「強化型?」
「そのとおり」
イーグリット隊員は、眼鏡のブリッチを指で押し上げると、静かに語り始めた。
「バゼラートをベースに、ソルリングX型ミサイルランチャーを追加し、さらに新型ローターにより機動性も従来の3倍に上がっている高速空中戦仕様だ」
「……バゼラート?(汗)」
「見ればわかるよ」
おもむろに指を鳴らす。と同時に輸送船の甲板が開き、下から強化型バゼラート高速空中戦仕様試作型が出てくる。
デザインは、バゼラートと大差はない。ただ、ローター部分の基部にやたらごっついブースターが増設されている。
「ちょうど実戦データもほしかったところでね。これでよければ使うといい」
少々不安もあるが、これならUFOキャリアーを落とせる。さっそく、その申し出を受けようとイヅキ隊員が口を開こうとして―――
「なに!?あの悪の根源を潰せるのか!?!」
今だブチキレモードのグレイ隊員が駆け寄ってきた。
「あれだけは、俺が潰すっ!!」
「あ…グレイ―――」
「む。待ちたまえ、そのヘリは――――」
二人が止める間もなく、グレイ隊員はコクピットに乗り込み、すぐさまエンジンを起動させる。
「おい、グレイ!!それは、普通のバゼラートと違うんだぞ!?」
「肯定だ。性能は上がっているが、操作を間違えると――――」
ゴォッ!!!!
突然、ブースターが火を吹いた。
さすがに近くにいては危険と、すぐさまその場から退避するイヅキ隊員とイーグリット隊員。
その後、バゼラートとは思えない加速で発進。細い煙を引きながら、まっすぐにUFOキャリアーへと飛んで行く。
「……なんつー加速だ…(汗)というか、もうヘリコプターじゃないな、あれ…」
「……なんてことだ。あのブースターは緊急離脱用のもので、普通は使用しないことが前提なのだが…」
飛んでいったバゼラート高速戦仕様を見て、頭を抱える。
「あれでは私の予想通りなら恐らく―――」
「恐らく…?」
すでに小さく見えるバゼラート高速戦仕様へと視線を巡らすイーグリット隊員。つられて、イヅキ隊員もそちらへと視線を向ける。
細い煙の尾を引きつつ凄まじい速度で飛んでいき、UFOキャリアーへと肉迫するバゼラート高速戦仕様。
そのまま急接近すると大きく旋回をして―――――
「……あ…」
UFOキャリアーに特攻した。
小さな爆発が一つ。直後、一体どんな威力だったのかUFOキャリアーが火を吹き始め、高度を落とし始める。
「……危急離脱用ブースターは、そのあまりの加速にコントロールが効かないのだ。だから、それを注意しておこうと思ったのだが…」
「……まぁ、システムの関係上…無事だろうし。一応はUFOキャリアーも落とせたからいいものの…」
呆然としたままイヅキ隊員は、さらに言葉を続ける。
「……あれって、もはやミサイルだよな」
「…うむ。これはこれで得るものがあった。元々、試作型だ。また次を作ればいい」
すでにUFOファイターのほとんどは撃墜されていた。キャリアーも落ちた事を考えれば、一応は大丈夫だろう。ただ――――
「……初登場の強化型バゼラートが、こういうオチで終わるのってどうなのかな?」
「……問題はないだろう。説明も聞かずに乗り込んだ、彼が悪い」
「…そうだな」
彼には悪いが、悪いのは本当にグレイ隊員である。読者から何か言われたら、彼のせいにしよう。そう心に誓うイヅキ隊員だった。
☆予告
確認された巨大生物の調査のため、開発部のイーグリット隊員を加えて、密林を進むイヅキ小隊。
なんとか苦労して奥地にたどり着いたイヅキ小隊が、そこで遭遇した物とは!?
次回――作戦No.011【未知との遭遇戦】
該当データ無し UNKNOW
□えむ’sコメント□
悪いのはグレイ隊員です。えむは一切悪くありません。苦情、文句、脅迫それに類するものは、全てグレイ隊員宛てでよろしくお願いします。
さて、第二話以来…久々に登場の彼。これでようやく~本番ってとこですよw
そして、次回はいよいよ―――ウワマテナニスルヤメr